雨音(あまね)

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雨音(あまね)

それは雨の日の夜やった 「雨音(あまね)と申します。可愛がって下さい」 初めてのお座敷へ私は障子を開け、正座のまま丁寧にお辞儀をした 本当言うとすごく怖い。客の相手なんかできるもんやろか? 「ああ、そこへ座ってくれ」 頭を上げ、お客の顔を見たんやけどやけに若いお侍さんやった。私は今年で十七になる。お侍さんは私より三つ上に見えた 「失礼します」 私はお侍さんの近くへ座って言うた 「えっと……その……こんばんわ」 お侍さんは私に向かい合わせに座って恥ずかしそうにそう言うた 「はぁ……こんばんわ」 なんやろ?こん人、ここに来るん初めてなんやろか? 「すまない、恥ずかしながら……私はここに来るのが初めてなんだ」 やっぱりなぁ……そんな気ぃしてたもん 「そうですか?実は私も今日初めてお客さんの相手をするんですよ」 「え?そうなのか?」 「はい」 そんな驚かんでも良いんちゃん?私より早ようお座敷に出た人なんか結構おるなに……もしかして、こん人は何も知らんのやろか? 「そうか……なら良かった」 「何がです?」 「いや……その……」 今度は困った顔になった。そして、顔をおもいっきり下げてこう言うた 「……すまないが、君に頼みがある。今日は朝になるまで話だけして帰らせて欲しい」 「はい?」 何を言うかと思ったら、夜の相手はせんで良いから話だけして帰るやて? 「なぜです?」 「それはだな……」 また困った顔になった。まさか……人切りなん?
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