5人が本棚に入れています
本棚に追加
雨音(あまね)
それは雨の日の夜やった
「雨音(あまね)と申します。可愛がって下さい」
初めてのお座敷へ私は障子を開け、正座のまま丁寧にお辞儀をした
本当言うとすごく怖い。客の相手なんかできるもんやろか?
「ああ、そこへ座ってくれ」
頭を上げ、お客の顔を見たんやけどやけに若いお侍さんやった。私は今年で十七になる。お侍さんは私より三つ上に見えた
「失礼します」
私はお侍さんの近くへ座って言うた
「えっと……その……こんばんわ」
お侍さんは私に向かい合わせに座って恥ずかしそうにそう言うた
「はぁ……こんばんわ」
なんやろ?こん人、ここに来るん初めてなんやろか?
「すまない、恥ずかしながら……私はここに来るのが初めてなんだ」
やっぱりなぁ……そんな気ぃしてたもん
「そうですか?実は私も今日初めてお客さんの相手をするんですよ」
「え?そうなのか?」
「はい」
そんな驚かんでも良いんちゃん?私より早ようお座敷に出た人なんか結構おるなに……もしかして、こん人は何も知らんのやろか?
「そうか……なら良かった」
「何がです?」
「いや……その……」
今度は困った顔になった。そして、顔をおもいっきり下げてこう言うた
「……すまないが、君に頼みがある。今日は朝になるまで話だけして帰らせて欲しい」
「はい?」
何を言うかと思ったら、夜の相手はせんで良いから話だけして帰るやて?
「なぜです?」
「それはだな……」
また困った顔になった。まさか……人切りなん?
最初のコメントを投稿しよう!