月夜2

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しばらくは気が抜けとった。お客さんやみんなの前では気丈にしよったけど……寝てしもても、夜中に目が覚めて一人で泣く事が多かった そんな時や 「月夜さん、ちょっとええ?」 「何?」 顔の化粧落とした時、声かけられた 「悪いんやけど……あんたに逢いたい言うてお客さん来とるんやけど」 ウチは早ぅ寝たいんや…… 「どんな客なん?」 「ちょくちょく来よったあの優しげなお侍さんや」 ……少し前から来よらんかったのになんで今更? 「分かったわ。今から行くけん」 素顔でもあん人は何も言わんやろ……ウチは自分の部屋を出ていった 「失礼します……月夜です」 一応声かけた……どうせ聞きよらんやろうけど 「……」 相変わらず窓から空をみよるんやね 「また月を見よるん?」 傍に座って言うてみた 「ああ、最近月がどうも悲しそうにしよるけんな……」 「月が?」 優しく眺めながらお侍さんは続けた 「そうや……月夜が泣いとるように見えたんや。仕事も手に付かんかったから来てしもた……何かあったやろ?」 ウチの方に振り向いて、お侍さんは問う。しかし、ウチはそれをはぐらかそうとした 「何を言うん?ウチが泣く訳ないやろ?」 「嘘はあかん。言うてみ」 「嘘なんか……」 「月夜」 優しい顔して名前を呼ぶけど……“ちゃんと言え”と言うてるように聞こえた そやけん……そやけんウチは…… 「……ウチは罰が降ったんやね」 「どうしてそう思う?」 「……こんな所おるけん……大事なもん……殺してしもた」 俯いて呟くようにウチは続けた 「誰の子供や知らんけど産みたかったんや……そやけど……無理な相談やって言うて……」 薬飲まされて殺してしもうた 「……そうか」 涙が流れとる……化粧してなくて良かったわ 「……」 「月夜は良い女やなぁ。それに月夜から産まれるはずやった子供も幸せ者や」 「……どうしてなん?」 「子供に対してこんなに想ってるからや」 ウチの片手をまたそっと握ってそう言うた 「月夜、今日はたくさん泣くんや。泣いてその後は泣くなや」 「……」 「そしたら子供は安心して成仏するやろ。今日だけは泣き」 「……ううっ……うぁぁぁ」 私は泣きじゃくった。赤ん坊の事を想って……ごめんなさい……本当にごめんなさい……明日は笑うから……今日は泣かしてや 私が泣いてる間、あん人はずっと傍におってくれはった…… ありがとう (完)
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