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急に大人しくなってしまった奏に亮は困惑した。
彼の顔は自分の肩に埋められていて表情を読むことが出来ない。ただ、ギュッと強く抱き締められて、なんだか切ない気持ちになる。
「奏…?おい、どうしたんだ…お前らしくないぞ。」
付き合う前、自分がどんなに冷たい態度を取ろうとも、決してへこたれる事無くアタックして来た千葉 奏とは思えない。だからこその問い掛け。
奏は尚も顔を伏せたまま話す。
「…だって…もうすぐ夏休みじゃないですか…。」
「は?」
突拍子もない話題が出て亮は間の抜けた返事をする。
けれど、奏の声色が真剣だったのでいつもの[何言ってんだ?]という言葉は声になることはなかった。
「夏休みになったら亮さん…家遠いし、忙しいし、会えなそうだから…。だから…」
「……。」
純粋に寂しかったのだ。
付き合う前、散々な扱いをされたせい…と言うわけではない。
ただ、亮の事を想うと彼の負担になりたくない奏は無理をしてまで会おうとはしない。故に会う機会が少なくなってしまう。
かと言って、奏がそれに耐えられるわけでもなくて…だから少し甘えてしまっていたらしい。
「バーカ。」
亮はペシッと奏の頭を軽く叩いた。
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