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大衆の押し黙った空間は緊張感があってぞくぞくする。 だけど私は大人の重い沈黙から発せられる想いをはねのけられる様に、賢い子供を演じた。 口をきくのは母から尋ねられた時だけ、小さな声で、母の耳にくちびるを寄せてささやく。 かわいいね、おりこうだね、という見知らぬ大人のお世辞には、首を傾げて、わざとらしく母の顔を振り返った。 母がありがとうございます、ほら、みなと、挨拶は??そう言ったら、はにかんだ様に挨拶をする。 こんにちは…。 気付いた時には、私は常連の老人たちのアイドルになっていた。 おりこうだね、本が好きなのかい、将来は絵本作家になるのかい、 勝手に想像を巡らせて、小さな笑みをこぼす彼らはどことなく寂しそうだ。
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