第三章 決勝戦

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第三章 決勝戦

決勝戦の当日の朝、大樹は痛めた足を冷やしていた。 カーテンを通した夏空は、かなり青かった。 大樹は腫れた足を治すのに、今日は試合したくないな~と考えていた。 ベランダの窓の下をカリカリと掻いている物がいる。 大樹はカーテンをそっとめくってみると、シナモンと目が合った。 大樹はギョっとした。 しかしシナモンの方がもっと驚いた様で、かなり慌てて仕切り板の下の隙間を通って、隣の繭のベランダに隠れた。 大樹はガラス戸を開けて、繭との仕切り板の下をかがみ込みながら覗く。 すると同じようにシナモンも仕切り板の下から顔を出した。 「オハヨー。お前顔ちっちゃいな。」 「ミャー」 「今日俺決勝戦なんだ。シナモンは雨降ると思う?」 「ミャーンミャ」 「そうか~雨降んないか~残念」 大樹はシナモンを相手に独り言を繰り返していた。 「なあシナモン。知ってるか? 上がり目 下がり目 クルリと廻ってニャンコの目」 そう言って両手の人差し指で目尻に円を描いた。 大樹がそんなとぼけた顔をしてると、いきなりシナモンの顔が消えて、繭の両目が仕切り板の下から覗かれた。 「おはよう大樹。猫アレルギーにしちゃ家のシナモンといい感じじゃん。」 繭は大樹のさっきの顔がおかしくて、つい笑顔になった。 「シナモンはカワユイ顔してるね。」 大樹にシナモンを誉められて繭は超喜んだ。でも 「シナモン。お友達は選んでね~。バカが移ると困るからね~」 と大樹に聞こえる様にシナモンに話しかける。 「なあ繭。今度シナモン貸せや。シナモンなら俺の猫アレルギーも治るかも知れないからさ~。」
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