16人が本棚に入れています
本棚に追加
第三章 決勝戦
決勝戦の当日の朝、大樹は痛めた足を冷やしていた。
カーテンを通した夏空は、かなり青かった。
大樹は腫れた足を治すのに、今日は試合したくないな~と考えていた。
ベランダの窓の下をカリカリと掻いている物がいる。
大樹はカーテンをそっとめくってみると、シナモンと目が合った。
大樹はギョっとした。
しかしシナモンの方がもっと驚いた様で、かなり慌てて仕切り板の下の隙間を通って、隣の繭のベランダに隠れた。
大樹はガラス戸を開けて、繭との仕切り板の下をかがみ込みながら覗く。
すると同じようにシナモンも仕切り板の下から顔を出した。
「オハヨー。お前顔ちっちゃいな。」
「ミャー」
「今日俺決勝戦なんだ。シナモンは雨降ると思う?」
「ミャーンミャ」
「そうか~雨降んないか~残念」
大樹はシナモンを相手に独り言を繰り返していた。
「なあシナモン。知ってるか?
上がり目
下がり目
クルリと廻ってニャンコの目」
そう言って両手の人差し指で目尻に円を描いた。
大樹がそんなとぼけた顔をしてると、いきなりシナモンの顔が消えて、繭の両目が仕切り板の下から覗かれた。
「おはよう大樹。猫アレルギーにしちゃ家のシナモンといい感じじゃん。」
繭は大樹のさっきの顔がおかしくて、つい笑顔になった。
「シナモンはカワユイ顔してるね。」
大樹にシナモンを誉められて繭は超喜んだ。でも
「シナモン。お友達は選んでね~。バカが移ると困るからね~」
と大樹に聞こえる様にシナモンに話しかける。
「なあ繭。今度シナモン貸せや。シナモンなら俺の猫アレルギーも治るかも知れないからさ~。」
最初のコメントを投稿しよう!