午前零時の湘南道路

3/5
前へ
/59ページ
次へ
  彼女の名前は『聖ヶ丘 睦美』   通称『ムッチー』   年齢は23歳で、市内のメーカーに勤務する会社員である。    勤務が交代制であり、時間が不規則になり家族に迷惑をかけてしまうことから、同じ市内の自宅を出て、会社に隣接した女子寮で生活している。   ムッチーは、オサムの従姉妹に当たり、休日にはオサムの妹の家庭教師としてオサムの家に出入りするらしい。   今日は、実家に帰ったところ、父親からオサム宅への届け物を頼まれて、先ほど来たと言う。     オサムが、集会に行けないという悔しい思いをムッチーに話した。   「それじゃあ、これからドライブでもしようか」   ムッチーからの思いもよらぬ誘いに、ワタルもオサムも飛び上がって喜んだ。   なにぶん、ヒマを持て余していた若者二人である。     早速三人は、睦美の乗ってきたセリカLBに乗り込んだ。   セリカと言えば、当時はスカイラインと人気を二分する、若者のステータスシンボルである。   「睦美さん…、凄い車に乗っているんですね」 ワタルが言うと、睦美が答えた。 「こんな車買えるほど、給料貰ってないよ。オヤジの車だ」   社会人から見ても、車は高価なモノなんだなぁ…。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加