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車は国道16号から246、藤沢街道を南下した。
ワタルは、全開の窓から入り込む冷たい風を、後部座席で受けて凍えていた。
だが、時折風に乗って漂う睦美のコロンの香りに、たまらなく女性を感じていた。
「オサム、永ちゃんのカセット入れてよ」
助手席のオサムが、ダッシュボードを探り、矢沢永吉のカセットを見つけてカーステレオに入れた。
「夜のドライブは、やっぱり矢沢だね」
永ちゃんの歌に、睦美とオサムが盛り上がった。
ワタルは、初めて聴く矢沢永吉の歌にシンクロして、完全にハイテンションになっていた。
途中、何度か暴走族や検問に遭遇したが、上手くやり過ごせた。
「アンタ達、暴走族やるのもいいけど、適当に足を洗いなよ。最初は楽しいかも知れないけど、シャレにならない事も沢山あるからね」
睦美が言うと、ワタルは「はい!」と返事をし、オサムは黙っていた。
それは、意味ありげな沈黙であった。
セリカが藤沢を抜けて、小動(こゆるぎ)で海岸に出ると、強烈な磯の香りが立ち込めた。
「お腹空いたね。どこかで何か食べよう」
睦美の提案に、二人は頷いた。
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