第一章-刻ハ動イタ-

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 今年も無事にやってきた夏休みの話だ。あたしが高校生の真ん中にいる、生活にしては平凡な17歳の8月。親友と呼べる友達の一人とバイト帰りに会おうと話があり、中学の母校近くの親友の家へと足を運んだ。7月の間は高校の課外授業のために顔を合わせていたが、親友の家に上がり込むのはいかにも久し振りだった。   「は?何、もう一回言って。」 「奏!あたしをバカにしてる?聞いててよ。」 「バカにしないと変態しか残らないじゃん。このショタコン。」 「わ、ひど!それでも友達か。」  友達だから言うのよ、なんて辛口に指摘するのはあたしの親友奏。あたしたちはクーラーの効いた涼しい部屋にのんびりとしていて、奏は雑誌を読みながらあたしの話に耳を傾けている。丁度家族がいないね、なんていう話題から弟の裕くんの話に変更していき、あたしがふと思い付いたことを口にすれば、奏は明らかに面倒臭そうな顔を返してきた。 「だからっ、北中に行って弟くんの様子見ようよ。」  もう一度奏にそう言うと、今度は小さくため息を吐いて雑誌を閉じた。あ、今日も目がくりくりして可愛いな。奏は自慢になるくらい可愛いもん。 「なんでそんなのに行くのよ。」 「んー、青春と汗に満ち溢れる少年たちを拝みたいから?」 「臭いだけじゃん。」 「だからいいんじゃん。」 「えー…。」 「お願いっ、奏!」 「…まぁさ、暇だからいいけど。」  なんて不貞腐れた表情しながら渋々OKをくれた奏は、なんだかんだで優しい。結構趣味や性格は違えど、ショタコンでオタクといったあたしと親友でいてくれるのも、誇りもっていい縁だと思う。類は友を呼ぶ、というのも事実考えもんだ。だって、あたしは今まで趣味一致でしか友達を作ろうとはしなかったが、奏とはまるでと似つかない性格なのだから。心の狭い人間の成長、と呼んでも間違いない気がする。  奏と友達になって間違いはひとつもない。 「ってゆーか、臭いとこに自ら行くとかキモッ!」  前言撤回しようか。
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