タライネコ1

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 どうやら箱の中身は一匹の猫らしい。 『あなた、何処の猫?』 『…』  部屋にいた雄猫は、私に気づいても喋らない。 『何故喋らないの?声が出ないとか?』 『…飼い主は居ない。此処もどうせ、俺を追い出すさ』 『どうして?』 『本当の飼い主は友達に預け、飼い主は引き取りに来ない。そして今度は友達は友達に押し付けたんだ』 「絶対に捨ててよ」 『ほらな。今度は捨てろだと…もう良いだろ』  雄猫はそっぽを向くと、箱に戻った。  三人目の人間は猫を睨んだが、頭を撫ではじめた。 「アンタも可哀相ね。でも団地では猫は飼えないの」
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