平凡過ぎる書き始め

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 200X年。世界は暗黒の力によって支配されようとしている。  そんなカッコイイ書き出しから始まるような物語りではないことを先に書いておこう。  学年末テストが終わり誰もがハジけそうになっている放課後。  満足そうな顔をする者やどこかのボクサーよろしく真っ白な灰になる者と様々だ。 「終わった……」  おっと、僕の隣でメロンパンを口に入れながら自分の問題用紙とにらめっこする奴。  コイツの名前は『河野 大地(コウノダイチ)』だ。  いつでも何かを食ってるような気がする。 「メロンパンはチョコチップだろ!食わせろ!」  そんなダイチのメロンパンを盗み食べる『巻 太助(マキタスケ)』。通称マキスケ、マキ。 頭に眼鏡を乗せているが別に目が悪いわけでわない。 「いや、俺はメープル入りのやつ好きだな」  ダイチの問題用紙に書いてある式の間違いを指摘する『内藤 直也(ナイトウナオヤ)』が言う。  たわいもない話だ。僕はこの一年この四人と過ごして来た。  そんな中突如ナオヤのケータイが鳴った。 「はい内藤です。……はい。……はい。わかりました。」  電話を切るナオヤ。 「誰から?」  マキスケが聞く。 「マキ、ダイチ。えっと……フロ、ナル、ミソ」  暗号じみた言葉を発するナオヤ。 「会長からか……」  ダイチが言う。  さっきまでだれてた奴らの表情が変わる。 「何だよ?何かあるの?」  僕は聞いてみたが、しかしナオヤは黙る。  つまり話せない内容なのだろう。僕はそれを感じとる。 「まぁいいや、先帰るな」  僕はそのまま歩く。  下駄箱で靴を履き変えて外に出るとまだまだ花を咲かせるには早い桜の木が僕を迎えてくれた。 「桜は……まだ咲かねぇな」  知らない長身の奴にそう言われた。年上だろうか。学ランを着崩す姿がそう印象付ける。 「そうだね」  僕はそう言葉を返すと寮へと歩き出した。  足取りは、軽い。
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