第一話 悲しい時、瞳から溢れる涙は熱くてしょっぱい

16/16
18641人が本棚に入れています
本棚に追加
/760ページ
その占い師は俺の名前を聞かず、手相も見ないでジッと俺の顔だけを見た。 「お前さん、随分運が無いねぇ……」 その言葉にドキッとしながらも、ポーカーフェイスは崩さなかった。 「いや……悪い運が先に集中しているだけ……このまま行けば、近い将来大きな幸運が訪れるぞ」 ※※※ 占いで良い結果が出て、気分が悪い人はそうそういないだろう。 俺もちょっとだけ気分が良くなって、自転車を飛ばしていた。 商店街から住宅街に差し掛かると寸前に、目の前の信号が赤になった。 何気無く自転車のブレーキを握ったら、 ブチッ! 両方ともワイヤーが千切れてしまった。 「あ……」 スピードはまったく落ちず、赤信号の歩道を渡ろうとした。 クラクションが鳴らされた!しかし、自転車は止まらない。 俺は車のライトに照らされ、黒いリムジンに撥ね飛ばされた。
/760ページ

最初のコメントを投稿しよう!