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その占い師は俺の名前を聞かず、手相も見ないでジッと俺の顔だけを見た。
「お前さん、随分運が無いねぇ……」
その言葉にドキッとしながらも、ポーカーフェイスは崩さなかった。
「いや……悪い運が先に集中しているだけ……このまま行けば、近い将来大きな幸運が訪れるぞ」
※※※
占いで良い結果が出て、気分が悪い人はそうそういないだろう。
俺もちょっとだけ気分が良くなって、自転車を飛ばしていた。
商店街から住宅街に差し掛かると寸前に、目の前の信号が赤になった。
何気無く自転車のブレーキを握ったら、
ブチッ!
両方ともワイヤーが千切れてしまった。
「あ……」
スピードはまったく落ちず、赤信号の歩道を渡ろうとした。
クラクションが鳴らされた!しかし、自転車は止まらない。
俺は車のライトに照らされ、黒いリムジンに撥ね飛ばされた。
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