第一話 悲しい時、瞳から溢れる涙は熱くてしょっぱい

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まぁ、それでも五体満足で生きてるって事は、やっぱり運が良いって事なんですかねぇ……神様!? 「テメェ!事務所来いや!!あ゛ぁ!?」 オッサンは俺の襟を掴んで、ゴキブリの様に黒いベンツに押し込んだ。 これでヤーサンの事務所に行くのは34回目だよ。おんなじ事務所に行った事は一度も無いけど……え?何でかって? ………すぐに分かるよ。 ※※※ 「えぇ。はい。そうです。二丁目の…そう、そこを曲がった所にある……え~と、橘建設事務所って看板が目印で……ハイハイハイハイ!そこですそこです!組長…あ、一応社長ですか?社長が顔面ぶん殴ったブルドックみたいな顔した……まぁ、実際ぶん殴ったんですけど……え!?何でも無いです、独り言ですよぉ。そこが密輸してて、いけないお薬とか危ない玩具とかいっぱい持ってるんですよ。はい。あっ、取り敢えずあるだけ袋に積めて奥の部屋に置いてますから……え?僕ですか?……フッ、名乗る程の者じゃないですよ。あ、怒っちゃいました?ごめんなさいごめんなさい。ま、名乗れないのはホントなんで……はい、匿名希望で。あっ、救急車の手配をお願いします。え~と………十七人分ですね。意識レベルは低いですけど、命に別状はないんで。はい、はい。はいそれじゃあ、バイニ~……」 ※※※ 安っぽい受話器を置いて、耳に当てていたハンカチとはめていた手袋を取ってポケットに入れた。
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