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パトカーは次第に人気のない廃れた道に侵入していき、やがて港に出た。
港の向かい側の埠頭では現在でも数多くの輸送船が出入りし、大小様々なコンテナが所狭しと積み立てられているが、それとは対照的にこちら側は、バブルで経営破綻した会社が所有していたような倉庫が建ち並ぶだけで、かつての活気は微塵も見受けられない。
よく映画などでギャングがよからぬ品物の取引をするのに使うような、あんな倉庫である。
確かに、ここは隠れ家にするには打って付けの場所だ。
パトカーは速度を緩め、人間の大人が歩くくらいのスピードでひとつずつ倉庫を見てまわった。
指導員が窓にへばり付いて懸命に倉庫の中を見ようとするその横で、沖はハンドルを力強く握り締めながら心の中で祈っていた。
どうか、犯人に出くわしませんように……!!
その刹那、彼の願いに反応して神がいたずらをしたとしか考えられないような事態が起こった。
雨が降りしきる港を、突然2発の銃声がけたたましく貫いた。
あまりの大音に、沖は肩をすくめると同時に車を急停車させた。
辺りにはまだ銃声の残響が鳴り響いている。
「なんだ、今のは!?」
怯えたように周りをキョロキョロ見回す指導員。
その間にも、沖の視線は一点に集中していた。
ここから5つほど先にある倉庫。
確かに、あそこから聞こえたような気がする。
その証拠に、その倉庫だけ巨大な鉄製の扉が半開きになっている。
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