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「どこから今の銃声が……」
「多分…あそこだと思います」
と、若干震える手で沖はその倉庫を指差した。
指導員はその先を鋭く見つめながら、目の前の無線を手にとった。
「こちら17号車、中巻埠頭で発砲事件発生、至急応援を求む」
『了解……全車両、直ちに中巻埠頭へ急行せよ』
指導員は無線を置いて、先程沖がやったように深呼吸をした。
「よし……行くとするか」
「えぇ!? で、でも相手は銃を持ってるんですよ!?」
沖のもっともな発言に指導員はしばし苦い顔を浮かべ、やがて意を決したように言った。
「仕方がない。死ぬよりか始末書を書かされた方がマシだ」
その一言を待っていたかのように、沖は腰に携帯していた拳銃を抜き取り、弾を込めはじめた。
車から降り、ふたりはまるで時代劇に登場する忍者よろしく抜き足差し足で倉庫との距離を縮めていった。
応援が来るまでの間、車の中で呑気に待機していては犯人をみすみす逃してしまうことになる。
そうなってしまう前に、こちらから何らかの行動を起こしておかないと。
もちろん、職務よりも自分の命の方が優先順位としては上なのはわかっていたが、なぜかこの時、沖の心にためらう気持ちは起こらなかった。
銃をしっかりと両手で握り締めながら、ふたりは半開きになった扉を両脇から挟み撃ちにする態勢をとった。
しきりにアイコンタクトを取りながら、沖は背中を扉にへばり付けた。
「警察だ!! ここは包囲されてる!! 銃を捨てて、おとなしく投降してこい!!」
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