12人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
――魔狼の住む雪山の麓に、決して大きいとは言えないが、活気のある町があった。そしてその中の雑踏に、青いショートヘアの女の子がいた。見たところ15~17歳だろう。見た目に不釣り合いな大きさの大剣や、真っ白な全身鎧を身に付けているため、非常に目立っていた。
「…………」
女の子がそこそこ大きめの酒場に入る。
「よう、エマじゃないか。どうした?」
「……良い仕事はないか見に来ただけ。」
エマ。青いショートヘアの女の子は男にそう呼ばれた。恐らくそれがこの子の名前なのだろう。
「良い仕事は……無いみたいね。」
掲示板を見てそう呟くと、踵を返す。鎧に付いてる赤いマントが音を立ててはためいた。そしてそのまま外へと消えていった。
「あれが……[白い魔女]……か…噂通り無愛想な女だな…」
「その圧倒的な力で一体どれだけの魔狼を狩ったんだろうな…」
白い魔女…椅子に座った2人の男の内の1人が言った。白い魔女とはエマの通り名だ。恐らくは圧倒的な強さと、常に白い全身鎧を身に付けている事から付けられたのだろう。
「にしても…何であんなに無愛想なんだ?まだ子供だろう。もっと元気があってもおかしくない年頃だと思うんだが?」
「何でも、5歳の時に魔狼に親を殺されるのを見てからずっとあんな感じらしい。」
両親が魔狼に殺された――――それがエマの魔狼狩りとなった理由だった。
最初のコメントを投稿しよう!