-魔狼狩り エマ-

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酒場へと入ると、いつものマスターが声を掛けてきた。 「よう。今日はジョウも一緒か?」 「おっちゃん。魔狼狩りの仕事、入ってる?」 ストレートにジョウが聞く。 「ああ。なかなかデカい仕事が入ってるぜ。」 「どれどれ………」 ジョウが掲示板に貼られている依頼書を眺める。 「な……マ…マジかよ…!?」 「どうしたの?……これは……!」 ジョウの反応に、エマも掲示板に近づき、依頼書を見る。それにはこう書かれていた。 ――この村の近くにある雪山付近にて多数の魔狼と思われる獣を見た。もしかするとこの付近に魔狼の群れがいるのかもしれない。調査を頼むと同時に、発見した場合は討伐してもらいたい――― どうやら旅をしている行商人の依頼らしい。雪山の付近を通る為、心配だから調査して欲しいとの事だった。 「…この依頼、乗った。」 そう呟くと、酒場のマスターに契約金を支払い、足早に酒場を後にした。 「…[白い魔女]が受けたか…こりゃ…雪山に大量の死骸が横たわるんだろうな…」 マスターの言葉がまだ誰もいない酒場に響く。 「…エマ、そんなに熱くなるなよ?あくまでも調査であって、絶対にいるとは限らないんだぜ?もしかすると野良犬を見ただけかもしれないだろ?」 「…………」 エマはジョウの言葉に反応すらせず、ただただ雪山へと足を動かす。 「……全く…………」 この時、エマはこの依頼が自分にとって大きな転機となる事を知る筈もなかった。
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