夏の始まり

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暑い…。 夏は嫌いじゃないんだ。 でも暑いのは苦手なんだ。 猫がひなたで寝転んでる、気持ちが良さそうに目をとろんとさせてる。 僕はしゃがみ込み猫に話しかけた。 「暑くないのかい?」 「……」 まあ、返答があるわけもない。 猫は欠伸をしてこっちを見てから、フイと行ってしまった。 「……つれないのぉ」 僕は猫がいたひなたになってる草むらに寝転がった。 僕は昨日住んでた家を追い出された。 もちろん家賃を滞納して。 ひとまずは友達の家に滑り込み、 今は近くの河川敷をぶらぶら歩いてた。 「これからどうするかねぇ~」 いっそこの辺の高級ダンボール住宅にでも住むか…、 なんて考えにふけっていると、 「付いて来い」 耳元でそう言われた。 視線を向けると、 さっきの猫がいた。 ビクッと上体を起こす。 「……」 「……」 見つめ合う猫と僕。 蝉達が急かす様に鳴いていた。 そんな感じで世にも奇妙な僕の夏は始まった。
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