第一章

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腕を組んでさらに悩み続けるアキト。 しまいには右手に顎を乗せている。 アキト「もう一回、ホウメイさんの所へ行くっきゃないか。」 ホウメイとは、初代ナデシコAで会った女性料理人。 アキトの師であり、かつてのナデシコAでコックを担当していたアキトも、よく世話になっていた。 現在は横浜に料理店を経営しており、うまいと評判である。 と、アキトが考え込んでいる時にガチャリ、と玄関の開く音がした。 薄い桃色の長い髪をした少女だった。 『ラピス・ラズリ』― ラピス「オ父サン、タダイマ!」 言葉は、まだ片言な所が多いが、ちゃんと会話も出来、性格も大夫明るくなった。 アキト「お帰り、ラピス。」 因みに、ラピスは小学6年である。 エプロン姿で玄関に出迎えると、もう1人、女性が見えた。 元戦艦『ヤマト』乗組員― 『森 雪』大尉(予備役)― 森「あら、アキトさん。また味の研究でもしてらしていたんですか?」 お転婆なユリカと違い、ちゃんとした大人の美しさのある森(談アキト)。 アキト「どうも、雪さん。いつもすみません。」 頭を軽く下げる。 アキト「って、そう言えば、随分と早くないですか?」 いつもなら、4時ぐらいの帰りであるのだが、今は10:00。 今更ながら、気付いたのである。 ラピス「オ父サン、知ラナカッタノ?」 可愛らしげに首を軽く傾げる。 アキト「はい?」 頭の上にクエスチョンを浮かべる。 フフッと森が笑うと、ラピスの変わりに答えた。 森「アキトさん、今日からラピスちゃんは夏休みですよ。」 アキト「あっ、そうだった!」 しまった、と言いたげな表情。 森「それに、今日は慰霊祭です。」 とはいっても、実地するのは昼の3時頃である。 ラピス「母サン、今日帰ッテクル?」 これは無論、ユリカのことを言っているが、ある意味、違和感を持つ方が多いだろう。 何せ、以前ラピスは、アキトと名前で呼んでいたのだから。 因みに、そう呼ばさせたのが、他でもないユリカである。 当時、ラピスにオ母サンと呼ばれて……。 ユリカ「お母さんって呼んでくれたァ!」 等と、ラピスを抱き締めながら騒いでいた。 アキト「確か到着は、11:00か。」 部屋の時計を見て確かめる。 森「後30分位ですからね。私は出迎えに行きますが、アキトさん達はどうします?」 アキト「俺も行きます。行かないと何言われるか分かったもんじゃないですから。」 森「わかりました。」 アキト「じゃ、俺すぐに支度しますんで! ラピスも急いで!」 慌ただしく家の中を走ること5分。 準備を整えた3人は車で、宇宙港へ向かった。
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