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「聞く前に自分が名乗る!」
彼は音が鳴りそうなくらいの勢いで、偉そうに人差し指を私に向かって差してくる。
この古いセリフを今時使う人いたんだと色んな意味で感動したが、あえて表には出さない。
「はいはい、すみませんでした。私は高坂美春」
若干バカにした言い方で言ったのに、彼は気付いていないらしく私の名前を聞けたことに満足気だ。
「………俺は――」
「「「きゃあああああ」」」
女子達のやかましく大きな叫び声で、せっかく名前を言った彼の言葉が遮られてしまう。
「「「晋くーん、かっこいい!」」」
彼女達はまるで、コンサート中のアイドル歌手に話しかけるような感覚で叫び声を上げる。
自己紹介をしようとしているのだろうか、彼の周りにワヤワヤと集まってきた。
イケメンな彼に対し、みんながアイドルを見るように騒ぐのも分かる。
………!
不意にさっきみんなが彼のことを「晋くーん」と呼んでいたのを思い出し、一気に血の気が引いていく気がした。
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