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「今話してるんだ。邪魔するな」
不機嫌な声で言うと、彼は手をヒラヒラさせて、彼女達を追い払う。
冷たい態度にバツの悪そうな顔をして、それぞれの席へと去って行った。
これ以上彼に纏わりついても、嫌われるだけだと思ったのだろう……物分かりのいい人達だ。
しばらくボーっとその姿を眺めた後、私はハッとして横を向いている彼を見上げる。
目があった彼は笑いを堪えるように私を見たのでムッとしたが、今はこの疑問をぶつけるのが最優先。
「あなた、もしかして……」
何もたかが名前を聞くだけに、こんなにもビクビクする必要はないのだが、なぜこんなにも緊張するのだろうか。
彼は、その質問を待ってましたと言わんばかりに、口角を上げた。
「矢上晋。よろしくな」
そう言ってさらに妖しく笑う姿を見れば、明らかに確信犯に違いないはずだ。
中々気付かない私も悪いのだけども、それに便乗して名前を名乗らないのもタチが悪い。
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