入学式

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  うわ、……超不機嫌。 右の眉を細かく動かしている姿を、私は珍しいものを見るように凝視していた。 眉を片方だけ動かそうとしてもできなくて、どうしても両方の眉が上がってしまう。 出来そうなのに出来ないもどかしさで、眉間には皺が寄るのだ。 ほとんどの人が他の人には動かせないのに、自分には動かせる体の部分がある。 指の第一関節を曲げられたり、耳をピクピク動かせたり…… ──ガラガラ 教室のドアが開いたと思っていたら、正装をした中年男性が入ってきた。 ハゲ……ではなくて髪の毛のないこの人は、高い確率で担任だろう。 みんなは先生の姿を確認すると、何も言わず席に着く。
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