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私はこれでもかというくらい目をパッチリと見開き、あゆ姉の姿を見ていた。
何度か目が合ったけれど、それは『姉』の視線ではなく『教師』としての視線だったため、すぐに逸らされてしまう。
きちんと公私を分けているあゆ姉はやっぱり尊敬できる。
「じゃあ、今日はこれで解散だ。寮生活の人は部屋割りを決めるらしいから、早く行くように」
ハゲ山先生は「オホンッ」と咳払いをしてから、教室を出て行く。
「あゆ姉!」
みんなが動き出すのを確認してから私はすぐに立ち上がり、あゆ姉に近寄った。
クラスメイトの視線が多少鬱陶しいが、気にしない。
「あゆ姉」と呼んだことと同じ名字のため、私達が姉妹だとすぐに広まるだろう。
「美春、転んだらしいわね。大丈夫なの?」
心配性のあゆ姉は私の全身を見回し、ガーゼが貼ってある膝の位置で目を止めた。
「ちょっと膝痛いけど平気。それより、妹のクラスの副担任なんてして大丈夫なの?」
「あら、私が贔屓するかと思った?」
あゆ姉は微笑んだのだが、その眩い笑顔に黒い物が混じっているのは、気のせいだろうか。
「いえ、思いません」
「当然よ。美春、あなたどこの寮なの?」
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