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慌てて教室を見渡せば、机がビシッと1㎜の狂いもなく恐ろしいほどきれいに並んでいた。
あゆ姉と晋くんと私以外誰もいないせいか、この教室には平和な空気が漂っている気がする。
話をするのに夢中になっていたからだろうか。
人が出て行くのは分かったが、まさか一人もいなくなっているとは思わなかった。
いくらあゆ姉と話すのに夢中だったからといって、みんなが教室を出て行くのに全く気付かないなんてどうかしてる。
とりあえず私は急いでスクール鞄を手に取り……走るっ!
「い、痛っ!」
鋭い痛みに耐えきれず、叫んでしまった。
ダッシュをする際に力強く踏み込んだのが悪いかったのだ。
何もない空間では私の声がきれいに反響しているのを感じ、人が残っていなくて良かったと思う。
怪我していたのを忘れるなんて、私の頭はイカれてしまったのだろうか。
何はともあれ、こんな状態では走ることは困難だ。
なんてツイてない。
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