8090人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
───…
「……まだ着かないの?」
教室を出てから軽く数十分は経つのに、未だ良く分からない場所をトボトボ歩いている。
周りは色々な教室のある校舎だらけで、寮がある気配なんて全く感じない。
この学校って、こんなに広かったのだろうか?
一般の私立高校よりは若干広いと思うが、お金持ちが通うようなバカでかい広さはないはずだ。
それなのに、なぜ学校の端すらもまだ見えないのか。
「反対方向に向かって歩いてるしな。着かないのは当たり前だろ」
サラッと晋が言った言葉を、寮に着かない苛立ちのせいで、危うく聞き逃しそうになってしまう。
……反対?
よく考えてみれば、寮がどこにあるか知らない。
なぜそんな事に気づかなかったんだろう……その答えは容易に出てきた。
晋のせいだ。
晋が寮の場所知ってると思って……
私が適当に歩いていても何も言わないから、合ってると思ったのだろう。
「ちょっと、どうして『間違えてる』って早く言ってくれないの?!」
頬を膨らまして晋を睨めば、クスッと笑って意地悪そうな笑みを浮かべた。
「寮に着くのが遅ければ、ほとんどの生徒がルームメイトを決めたはず。つまり、美春のルームメイトがいなくなって、俺とルームメイトになるかもしれないだろ?」
――っこんの悪魔!
最初のコメントを投稿しよう!