寮生活の始まり

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  ───… 「……まだ着かないの?」 教室を出てから軽く数十分は経つのに、未だ良く分からない場所をトボトボ歩いている。 周りは色々な教室のある校舎だらけで、寮がある気配なんて全く感じない。 この学校って、こんなに広かったのだろうか? 一般の私立高校よりは若干広いと思うが、お金持ちが通うようなバカでかい広さはないはずだ。 それなのに、なぜ学校の端すらもまだ見えないのか。 「反対方向に向かって歩いてるしな。着かないのは当たり前だろ」 サラッと晋が言った言葉を、寮に着かない苛立ちのせいで、危うく聞き逃しそうになってしまう。 ……反対? よく考えてみれば、寮がどこにあるか知らない。 なぜそんな事に気づかなかったんだろう……その答えは容易に出てきた。 晋のせいだ。 晋が寮の場所知ってると思って…… 私が適当に歩いていても何も言わないから、合ってると思ったのだろう。 「ちょっと、どうして『間違えてる』って早く言ってくれないの?!」 頬を膨らまして晋を睨めば、クスッと笑って意地悪そうな笑みを浮かべた。 「寮に着くのが遅ければ、ほとんどの生徒がルームメイトを決めたはず。つまり、美春のルームメイトがいなくなって、俺とルームメイトになるかもしれないだろ?」 ――っこんの悪魔!
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