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「この学校だったんだな」
昔を懐かしむようなしんみりとした靖とは対照的に、私はこれでもかと言うほどの満面な笑みを浮かべる。
「懐かしい!坊主だったのに、立派に髪の毛生えちゃってさ」
靖の髪を片手でクシャクシャにしながら、手のひらに伝わるチクチクした感触を楽しむ。
部活を引退してから全く手を付けていない髪の毛は、弄ぶには少しだけ長い。
「春は変わんねえな」
苦笑いを見せた靖だが、どこか懐かしんでいる雰囲気を出していた。
「……誰?」
先ほどまで二人の会話をずっと聞いていた晋が、不機嫌そうに間に入り私と靖を交互に見る。
靖と話をするとき声が大きすぎたのだろうか……顔を歪める晋を見て、騒ぎすぎたと後悔しながら口を開いた。
「幼なじみなの。中学入る頃に靖が転校しちゃったんだ」
興奮を抑えようとするが、幼なじみが同じ学校、同じ松寮でしかもまだルームメイトを見つけていない。
こんな偶然が重なってしまえば、興奮せずにはいられないだろう。
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