寮生活の始まり

11/28
前へ
/604ページ
次へ
  「お前ら……盛り上がるのはいいが、早くルームメイトを決めてくれ」 業を煮やした先生が腕を組ながら睨んでくるのでびっくりしたが、これ以上怒らせてはいけないと無意識の内に感じ本題へ戻る。 「じゃあ私、靖とがいいな。知ってる人なら安心だし」 靖の意見を聞こうとチラリと見れば、お決まりの爽やかな笑顔を振り撒きながら言う。 「俺は別にいいぜ?でも野球は大好きだぞ」 この状況で「野球が好き」という発言は明らかにおかしいと思うが、私だけは顔を真っ青にさせた。 「まさか……あのポスターやグッズや……」 「もちろん……あるぜ」 小学生の頃、一回だけ靖の家へ行ったのを覚えている。 壁一面には野球選手のポスター。 ガラス張りの棚の中には野球選手のフィギュア・カード。 もちろん棚の上にはサイン入りのボールやバットがあった。 部屋全体が、靖の贔屓する野球チームでいっぱいだったのだ。 その迫力に思わず棚のガラスを触ろうとしたら、靖に怒鳴られてしまった。 野球選手に囲まれ、しかもそれらに触れようとしたら怒鳴られる。 こんな生活耐えられるはずがない。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8092人が本棚に入れています
本棚に追加