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  「んじゃあ、俺達そろそろ部屋に戻るな」 「どっこいしょっ」とオヤジのようなかけ声を上げて靖は立ち上がる。 入り口までの距離は大した事はないが、見送りのために私も立ち上がった。 「また来てね」 「もちろん」と親指を立てて返事をされ、嬉しさのあまり自然と顔が綻ぶ。 「お邪魔しました」 壱が部屋から出る際、非常に丁寧な物言いで挨拶してきたので、思わず背筋がピンと張ってしまった。 ──パタン ドアの閉まる音が静かな空間に響き渡り、なんとも言えない悲しさを醸し出している。 二人が去って、部屋の空気がかなり軽くなった気がするのは気のせいだろうか。 「飯にするか?」 晋の言葉に壁に掛かっている時計を見れば、もう夕飯を食べているであろう時間だ。 「うん、お腹空いたしね。食堂行こうか?」 「いや、俺が作る」 部屋にはお昼に買ったばっかりの食材があるので、作って食べることは可能だ。 「私が作るよ」 どうせ晋には料理できないだろうし……なんて思いながら私はキッチンを向く。 「……美春、座ってろ。そんな足で動こうとするな」
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