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清野はあいに対して非常に冷たくあたる。
お土産のお菓子を配れば、あいだけ抜かし、みんなに挨拶してまわっていても、あいは無視。
清野の視野に、あいの存在は無かった。
あいにとって、清野はストレスだった。子供みたいな意地悪を毎日され、ただ我慢。小さな事だけれど、それが毎日だと、あいも参ってしまう。
そんなある日、伊藤があいを誘ってきた。
「今日、祥行こうぜぇ」
身長192、小さい顔、まるでモデルのような伊藤は以前、竹本とあいと3人で飲んだ時、今度あいに奢る約束をしていたのだ。
「わぁい!ごちそう様でえす!」
約束の時間、あいが祥に行くと、伊藤はもう2杯目を飲み干そうとしていた。
「おーつかれさまでーす!」
あいはカウンターに座っている伊藤の隣に腰掛けた。
「遅い」
「ええ!?伊藤サンが早すぎですからっ!」
「何飲む?」
「えっと・・・マネージャーさん!マンゴー味のカクテルくださぃ」
「なんだそれ」
伊藤の淡々としたマイペースな口調に、あいは笑って突っ込む。
「伊藤サンのペースに引きずりこまれる~(汗)」
それでも伊藤は自分のペースを崩す事は無い。
「あとで高橋も来るから。」
「へぇ!高橋クン、竹本サンからは逃げるけど、伊藤サンには断らないんですね!」
あいが笑ってそんな事を言ってる間に、目の前にはオレンジ色のカクテルが置いてあった。
「カンパイ!」
30分程経った頃、あいの携帯が鳴った。
着信 高橋クン
「もしもし?」
「俺だ。もう着く。伊藤さんまだいる?」
「うん、ちゃんといて待ってるよ」
「もう着くから、じゃぁな!」
高橋の電話は、いつも急いでいるようだ。
そして間もなく、高橋は店に入ってきた。
「お疲れ様です!」
高橋は伊藤に頭を下げる。
「おー仲田お疲れ」
あいには適当だ。
高橋はあいの隣に座ると、メニューを見る事もなく
「すみません、コロナください!」
高橋はいつもコロナを頼んでいる。
「かんばぁい!お疲れぇ!」
3人はグラスをならす。
「じゃ」
伊藤が1万円札をコースターの下に挟み、立ち上がった。
「えっ?高橋クン来てまだ10分も経ってナィですょ?」
あいが引き留める。
「いや、色々あるんだ。また飲もう。
高橋と二人で楽しんでくれ。」
「えっ」
伊藤はフッと手をあげて、店をあとにした。
あいと高橋と1万円札が、店に残された。
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