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すき と ファン
あいは来年の6月に、今1年付き合っている彼氏との結婚を控えていた。彼氏が大好きなあいは、彼氏がいることを公言していた。あいの周り(事務所内)は、ほぼ既婚者。彼氏も、さほど心配はしていないようだった。
赴任して1週間、あいはようやく事務所内の人の名前と顔が一致するようになった。
「仲田さん、おはよう!」
「あ、飯田さん、おはようございます!」
いつも笑顔で声をかけてくれる、工事グループの飯田。みんな親切にしてくれるが、あいにとって飯田は一番話しやすい男だった。妻子持ち、28歳の飯田は小柄だが、しっかりした感じがし、清野が特に気に入っている男だった。
「飯田さんの声、私好きです」
あいは飯田に会うと、いつもそんな事を言っていた。あいは飯田の声が大好きだった。
そんな飯田も、妻子持ちながら気に入っている女性がいた。小渕だ。
あいが赴任してから、ソレを知るまでには、さほど時間がかからない程、皆に知れた事実だった。
飯田は毎日、小渕にメールしていた。
ある日の昼休み
「飯田さんて、ホント小渕サンの事大好きですよね!」
あいが言った。
蛯原も清野も頷いている。
「まぁたぁ!違うし、好みじゃなぃもん。サル顔だし仲田サンの好みの顔じゃない?飯田さんと仲良いし!」
小渕が言い返す。
「私は飯田サンのファンなんですよ、好きじゃなく」
あいは答えた。
「好きとファンて何が違うの?」
清野が挟む。
「好きはラブですけど・・・ファンだからその先を望んでナイってゆうか・・・」
あいは気持ちをうまく表現できずにいた。
「ファンなら先を望んでしまうよ!ヤりたいとか!結婚したい!とか。」
小渕が言った。
独身4人の中、最年長の清野は、結婚の言葉にわずかながら反応していた。
あい以外の3人は、みんなその意見だった。
しばらく話し合った結果、「若いひとの考え方」として、一段落ついた。
それから2週間後、建築JVでの飲み会が催された。
2次会・3次会と、徐々に人数が減っていく。
深夜1時をまわり、歩きで帰るあいは、飯田に送られていた・・・。
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