真理子

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あれから数日が経った。 今でもあの衝撃が重く胸を締め付ける。 故意にではないが、真理子とは顔を合わせていない。 そのせいもあり、わたしの中であの日のことが幻想のように思い込まれてきていた。 「ただいま」 「あー、早いね。ママ、パパ帰ったよ」 ああ…真理子。 不意に真理子に出迎えられてしまったわたしは、膝から崩れ落ちてしまった。 「何?酔ってるの?」 「何でもないんだ。本当に何でもないんだ。」 そう言いながら涙がポタポタ革靴の先に落ちた。 「ママ!パパ泣いてるんだけど」 妻と、娘に抱き抱えられ居間に入るとストンと床に子供みたいに座りこんだ。 妻が上着を脱がしてくれ、されるがままにネクタイを外されしてると、見兼ねたかのように真理子が靴下を脱がしはじめた。 「足の裏ガッサガサだね。パパ、世渡り下手でしょ?」 「何言ってんの。真理子にそんなこと言われたくないわよ、ね。…どうしたの?」 綿のシャツを首元まできちんとボタンをかけ、靴下をはき、少しも肌を見せない真理子が悪魔なのか天使なのか、嬉しいのか悲しいのか。 わたしは、訳もわからず泣き続けるしかなかった。 酔っ払いを演じるしか正気でいられそうもなかった。
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