■満月の夜に

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満月が空を覆っている。 綺麗な綺麗な満月が。 丸い丸い満月が。 雲ひとつない空に浮かぶ月は 何処か恐ろしく、何処か悲しい。 僕にはそんな風に見えた。 ζ(゚―゚;ζ「はぁ………はぁ………!」 呼吸は荒く、その声すら上擦ったような感じで出てしまう。 勤務時間は終わり、人は皆居なくなったビルの非常階段をかけあがる。 ζ(゚―゚;ζ「はぁ………はぁ………!」 歳は20代後半といったところだろうか。綺麗に巻いた茶色の髪は走っている間に乱れ、それすら気にせず一心不乱に階段をかけのぼった。 ζ(゚―゚;ζ「どうしよう…………どうしよう………?」 上擦った声は自ら恐怖心を煽った。
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