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浜辺で、赤く長い髪をたなびかせている少女がいた。
「秋葉(あきは)、こんなところで何をしているんだい?」
不意に声をかけられ、秋葉と呼ばれた少女は振り向く。
「海を眺(なが)めていたんです」
そう答え、秋葉は再び海に目をやる。
声をかけた主・秋葉の兄が秋葉の横に座る。
「秋葉は海が好きなのかい?」
「はい。どこまでもどこまでも続く青い道……綺麗ですよね」
この、当時五歳の秋葉は、既に『炎』の能力に目覚めていた。もちろん秋葉以外、そのことを知る者はいない。
「でも秋葉、こんな時間にこんな所にいたら、危ないよ?」
「私なら大丈夫です。兄さんこそ、彼女をほったらかしにしていていいんですか?」
秋葉の兄・秋池(あきち)は苦笑いをし、
「彼女とは別れたよ」
そう言った。
秋葉は思わず「えっ!?」と声を上げて驚いてしまう。
「何でですか!?兄さん、浮気でもしたんですか!?」
「浮気って……秋葉、一体どこでそんな言葉覚えて……まあいいや」
秋池はため息。
「僕が女の人と付き合ってるとき、秋葉は一人ぼっちだろう?そんなことがないように、僕から別れを告げた」
「兄さん……」
「ほら秋葉、」
秋池は秋葉をお姫様抱っこする。
「帰るぞ」
秋葉は顔を赤く染め、しかし文句は言わずに帰路に着いた。
ある夏の暑い日の夜中、眠っていた秋葉は不意に目が覚めた。
「?」
隣で寝ているはずの兄がいないことに気付き、秋葉は布団から身を乗り出す。
「兄さん、起きているのですか?」
秋葉と秋池が住んでいる家は1Lと大きくない。よって家に誰かがいればすぐにわかるのだが、しかし秋葉以外は誰もいない。
不安に襲われ、鼓動が高鳴る。
「くっ……!」
必死に抑え、とりあえず風呂場へ向かう。
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