第一章 警視総監から直々に

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此処は警察が管理する、射撃練習場。 引き金を引く音や、撃ち抜く音が響いている。 何人かがピストルを構える中で、一際目立つ者が居た。 ショートカットの明るい茶髪を靡(ナビ)かせ、左手でピストルを構える女。 八木崎真理亜である。 彼女は僅か二十歳で警部にまで登りつめた。 何故か。 今の日本は、完全なる実力社会だからだ。 以前は年功序列であったが、少子高齢化の影響でバランスが悪くなり、成り立たなくなってしまった。 高齢者を支える若者はどんどん減少し、一人あたりの負担はどんどん増加した。 その為、政府は成人年齢を十八歳に引き下げた。 それを皮切りに様々な改革が為され、就職する若者が増えた。 少しは問題が解決されたように思われたが―…。 以前にも増して激しい実力の競争が勃発したのである。 何か長けている者は、例え若くても実績を残せば高い地位に就くことが出来る。 だから、年齢も学歴も、性別も関係無くなった。 実力が全ての社会が、今の日本だ。 勿論、若くして警部にまで登りつめた真理亜も例外ではない。 真理亜はあまり勉強が出来なかったが、警察内で行われた射撃大会でも武術大会でも優勝している。 その他にも、出場した大会で全て優秀な成績をおさめている。 その為、現場で戦いになれば容易く相手を捕まえられる。 その実力が評価され、今の地位に居るのだ。 真理亜は数十メートル先の的を見据える。 左手のピストルを微調整し、狙いを定める。 そのとき、 「八木崎警部」 中年男性がやって来た。 真理亜の部下らしい。
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