猫の話:禍つ猫

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   たどり着いたのは中国の奥地。 何重にも御札が貼られた祠の中にソレはいた。  銀色に輝く瞳。 黒く艶やかな毛並。 ゾッとするほど禍々しい大気。 『ナニ用ダ』 『お前を食えば人間になれるかえ』 『グハハハハ、 食ッテミルカ!? 悠久ノ時ヲ生キテキタ。 オ主ニハソンナ孤独ガ耐エラレルカ』  食い殺されそうな程の殺気に目眩がする。 注意深く辺りを見回してみれば様々な形の猫が無惨にも息絶えている光景が目に映った。  それらは総てコイツに殺られたのだろうと本能が告げてくる。 関わってはいけない相手なのだと。 『こいつらは?』 『タダノ腰抜ケダ。 サァ、 主ハドチラダ?』  楽しませてみろよと化け物が告げると同時に何かが流れ込んできた。      ソレは猫の記憶。  叩かれ、 殴られ、 捨てられる者。 狂おしい程の飢え、 乾きにより息絶える者。 生きながらにして焼かれる者。  様々なモノの記憶。 残像が流れ込んできた。
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