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俺が第一声をかけた時のような顔で、曲者はだまる。
どうも俺の反応が予想外だったらしい。
「他に言うことはないのか?」
そして、最初と同じ言葉を返した。
「可愛いですよ」
「違う。少年、君はもっと驚かないのか?」
「わーいネコミミだー、可愛いなーすごいなー初めて見たーうふふふふ」
「…私が悪かった。許してくれ、少年」
気の毒な奴を見る目で見られた。
リアクションは嘘だが言葉の方は本当だ。
元が美人だから、猫耳がよく似合う。
だが。
「それでも、異形な感じで気持ち悪くもありますね」
「……調子が狂うな。そういうまともな反応を最初に持ってこれないのか」
やれやれといった風に、曲者はため息をつく。
まともかどうかはさておくとして、俺としてはどちらも正直な感想だ。
後も先も関係ない。
「あなたは人間じゃなくてバケネコだ、ということでいいんですか?」
「本当に話が早いな、少年。だけどどうしてそう動じない? 化け物を見るのは初めてじゃないのか?」
「実感がないだけです。あなたはどう見ても人間ですから。だから、そのネコミミが気持ち悪く見えるんです」
「成る程、な…」
それだけ言うと、曲者は一つ大きな欠伸をして、ベッドに倒れた。
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