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「ていうか、昨日着てた服を一式脱ぎっぱなしにしてるんじゃ…」
よくよく見るまでもなく、下着まで脱ぎ散らかしたままだ。
全裸でどこへいったのだろう。
俺の布団の中にいるなんて、漫画や小説ではお決まりというより真理とでもいうべき状況でなかったことは、素直に安堵したが。
と、そこまで思い至ったところで、俺の布団からのそのそと這い出てくるものがあった。
黒猫である。
艶やかな毛並み。
金色の目。
しなやかな体躯。
目が覚めたばかりなのか、大きな欠伸を一つ、にゃあと鳴きながら俺の脚に擦り寄ってくる。
そして。
「おはよう、少年」
唐突に聞こえた挨拶。
部屋には俺以外に人間はいない。
声は足元から聞こえたが、そこには見知らぬ黒猫がいるばかりだった。
「……本当にバケネコだったんですね」
「反応が薄いな、少年。やはり全裸で添い寝してやるんだったよ」
「恩を仇で返す気か、あんたは」
「そのつもりがないから、猫に戻ったのだよ」
言って、無風さんは伸びをする。
しかし、普通の猫が人語を話すというのは、今更ながらちょっと気持ちが悪い。どうにかならないのだろうか。
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