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そんな俺の胸中などどこ吹く風で、無風さんは部屋を出ようと出口に向かう。
しかしその扉は閉まったままだ。
「少年、開けてくれ。シャワーを浴びたい」
「ちなみにそのまま人の姿になったらどうなりますか?」
「全裸だが」
「どうぞ」
扉を開けた。
もちろん風呂場までタオルを持って同伴した。
昨日の一件で半ば無理矢理に居座った無風さんだが、きちんと気を遣ってくれているようだ。
冷静になって思い出せば同じ布団で眠っていたわけだが、その時も猫に戻っていた。
意外と常識人なのかもしれない。
そんなことをつらつらと考えながら台所に立ち、昨日の夕飯の残りを温める。
普段ならそこで終わりだが、無風さんがちゃんと俺に気を遣ってくれている以上、こちらもそれなりにもてなすのが筋であろう。
幸い時間はまだ余裕がある。
鯖の塩焼きくらいならば、なんとか間に合うだろう。たしか切り身があったはずだ。
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