90人が本棚に入れています
本棚に追加
〇
「っ……!」
ベッドから飛び起きる。反射的に制服を一式引っ掴み、即、着替える。
時計の針はもうすぐ七時半を回ろうとしていた。
手櫛で寝癖を整えながら(気休めだ。直った試しがない)、転がるように階段を下りる。
――と。
「…………」
「おはよう、夏風」
下りたところで夏風と鉢合わせる。
朝食を待ちきれず起こしに来た、といったところだろうか。
悪いことをした。
「すぐに支度するから、もう少し待っててくれ」
言いながら脇を通り抜けようとし、
「…………」
ブレザーの裾を掴まれる。
そうして俺に先行するよう歩き出し、三歩進んだところで振り返り、親指を立てて背後を指す。
焦るなよ、まあゆっくり着いてこいや。
あたかも、そう言わんばかりに。
逸る気を無理に落ち着けながら、忘れ物などがないか頭の中で確認しつつ夏風に続く。
気が抜けたのだろう。
どんなにうだうだ考えようが自己嫌悪に陥ろうが、体は正直だったようだ。
昨日までの疲れは大方抜けている。
それで寝坊したのだから、格好がつかないが。
最初のコメントを投稿しよう!