九日目

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〇〇 朝。 「九奈ー、ちょっと来てくれ」 「はいよ」 授業の合間。 「九奈君、資料運ぶの手伝ってもらえる?」 「了解」 昼休み。 「九奈君、書類の整理手伝ってほしいんだけど、いい?」 「分かりました」 放課後。 「九奈、久しぶりに卓球部に顔出してくれねえか?」 「あー、図書委員に手伝い頼まれてるんだ。その後でいいか?」 「や、それならまた今度だな。帰りが遅くなっちゃ申し訳ない」 「悪いな。明日にでも覗きに行くよ」 と、まあ。 これが俺の日常だったりするのだが。 「なんか、久しぶりだな……」 誰に対してでもなく、一人ごちる。 図書委員に頼まれた手伝いを終えて、現在時刻は午後五時半。 春風には先に帰ってもらったし(諸事情により顔を合わせるのが照れ臭い)、あさぎはまだ部活の最中だ。 葛塚も生徒会役員と会議をしているようだったし、買い物の必要もないから冬風や秋風と一緒というわけでもない。 人もまばらな通学路。 一人暮らしだったころに戻ったような錯覚。 嵐の前の静けさとも違う。 昨日までの騒動が夢のように思えるほど、平和な匂い。 満ち足りているようであり、物足りなくもある。 まあ、家に帰れば、否応なしに騒がしくなるのだが。
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