九日目

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俺としては宗旦に対して四匹が萎縮しないかが心配だったわけだが、それも杞憂だった。 昨日からの様子を見る限りはむしろ顔見知りのような印象を受ける。 あるいは、以前にも今回のようなことがあったのかもしれない。 人間による、謂われなき迫害。 ……やはり深く聞く気はない。 ただ、人に受け入れてもらうために努力をしてきた猫又に対して、俺が負っている責任は大きい。 再認識すべきはそれだけだ。 ともあれ、しかし。 四匹について知ることは必要ではある。 近いうちに、それぞれと個別で話をしてみるのもいいだろう。 「………………」 思考が一区切りついたところで歩みを止める。 なんとなくだが、学校を出た辺りから視線を感じていた。 似合いもしない自意識過剰ならばそれでいい。 杞憂であれば救われる。 確証がない以上、無視を決め込んでもいい。 無風達ではなく、わざわざ俺を尾行するような何者かならば、大した脅威にはならないだろう。 そう思いつつも俺は踵を返し、来た道を戻る。 遮蔽物はないでもない、あるいは、あるにはある、という程度。 こういう場所で身を隠せるようであれば、むしろこそこそとする必要などないだろう。
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