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○○
初めは赤。
次は青。
最後は白。
人間という生き物は色による表現が好きなんだと思う。
真っ赤な嘘。
薔薇色の人生。
黄色い声。
青い顔。
俺達の生活は、内面的にも外面的にも、これでもかというくらい色んな色に彩られている。
……みたいなことを夕食の時に見ていたテレビ番組で放送していた。
成る程、然り。
色も人間を縛る概念の一つか、と、息を吐くように独白する。
閑散とした家の中では誰にも届かず、その呟きは大気に溶けた。
二十二時三十分現在。
夕食を終えてから居間でくつろぎ、風呂に入った後は電源を入れたテレビをひたすら無心に眺めていた。
番組が切りのいいところで終わったため、さて勉強でもしておくかと部屋に戻る。
いつも通りの階段。
部屋までの間をつなぐ僅かな廊下。
隙間風のためか屋内でも大気は微かに動いていた。
古い家だと、聞いている。
俺が結婚するころには築百年を迎えるだろうと両親は言っていたか。
事実、外見からして年代物だ。
内側も、妖怪がでてもおかしくないような箇所がいくつか見られる。
一言で言えばぼろいのだ。
それでも俺はこの家が好きで、しかし同時にちょっとばかり嫌いだったりもする。
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