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『 私が生まれたのは古びたビニールハウスなの。
砂漠なんて野蛮な所じゃないわ。
私を可愛がってくれたおばあちゃんは、いつもあたしに話しかけてくれたわ。
サボなんて貧相な名前じゃなくて、
もっと素敵な名前を付けてくれたの。
けれど次の日にはまた違う名前で私を呼ぶのよ。
確かにね、私だけじゃなく、
たくさんのサボテンを可愛がってくれていたから、わからなくなったのかもしれない。
フランソワ、マチルダ、サチコ、
タロウ、シンデレラ、マイケル、ヒメ
…数え切れないくらい!
私はね、おばあちゃんが付けてくれる名前はいつも素敵で、とても嬉しかったの。
おばあちゃんが優しく名前を呼んでくれる事も、とても嬉しかった。
そう、どんな名前になるのか本当に楽しみだったわ。
明日はまた、優しい声でどんな名前を呼んでくれるのかしら?って、待ち遠しかったの。 』
………
『 ねえねえA、見て?
似合うでしょう?この赤と白の市松模様。
たしかあの子がAにくれた指輪だけど、
私がもらっちゃってもいいわよね?
あの子は私に話しかけてくれることなんて一度もなかったけれど、
いつも優しい目で私を見てくれてたわ。
私もあの子が好きよ。
だから、この指輪、私も欲しい!
ほら、私の右手にピッタリ!
あなたより私の方が似合うじゃない? 』
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