280人が本棚に入れています
本棚に追加
吸血鬼という存在を、
私は信じていなかった。
それ以前に実在するだなんて、
考えてみたこともなかった。
彼、滝島 秦(タキシマ シン)と出会うまでは。
唐突に私の目の前に現れた彼。
夜空に飲まれそうな漆黒の髪に
控えめに輝く星のような、黄色の目。
目にした瞬間、私は固まった。
その存在全てが、私を引き寄せた。
強い衝動。
人はそれを、恋と呼ぶ。
「か…会長?」
「今晩は」
「な、何してるんですか?!」
「今日はええ満月やな」
最初の会話は多分、そんな感じだった。
チグハグで、筋の通らない会話。
突然ベランダに現れた人影は、
同じ学校の生徒で、そして有名な生徒会長で。
とりあえず、まずはそこにビックリ。
しかし、心底驚いたのはその先で
「俺、実は吸血鬼なんよ」
そんなことを、サラリと言われたことだ。
あの日のことを、私は今も
鮮明に覚えている。
.
最初のコメントを投稿しよう!