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忘れられるはずがない。
あの日から私の中で、秦の存在が大きくなっていったのだから。
「……ごめんね」
放課後、帰り支度をしていると唐突に、横の席の紗綾が言った。
彼女は、私の唯一無二の親友で
同じく、吸血鬼に恋している。
しかし吸血鬼と言っても、
会長のような、吸血鬼ではない。
半分、人の血が混じった半吸血鬼だ。
故に、18才になれば、死が訪れる。
そうならない、完全な吸血鬼になる為には、願いを叶える石が要る。
その石を求め、先日私達は戦った。
彼女は、半吸血鬼の命の為に。
私は、会長の国の民の為に。
「気にしなくていいよ」
私は苦笑ともとれる笑顔で言い、
鞄に筆箱を詰め込む。
あの日、私は彼女に負けた。
「…滝島会長は?」
「さあ、生徒会室かな」
「そうじゃなくて!!」
バンッと叩かれて、少し揺れた机。
紗綾の言いたいことは、わかっていた。
会長は、これからどうするの?
紗綾はそう聞きたいのだ。
私はせかせか動かしていた手を止め、一息つく。
勿論、答えは分かりきってる。
分かりきっているけれど、言いたくないのだ。
それを、認めてしまうことが
怖くて。
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