†恋の魔法は零時まで†

4/7
前へ
/30ページ
次へ
「ねえ、紗綾」 「ん?」 紗綾の後ろの窓から差す光のせいなのか、紗綾が輝いて見える。 迷いもなく、真っ直ぐに吸血鬼を愛すると決めた紗綾。 共に歩むことを願い、信じた紗綾。 「この恋は…間違いだったと思う?」 私の前に唐突に現れた吸血鬼。 彼は、貧しい一国を背負う王子で、 それを改善する為に、こっちの世界にやって来た。 だから、リルが手に入らなくても どの道、会長は向こうの世界に帰ってしまう。 そのことを、私は知っていた。 …最初から。 「間違いなんて、思わない」 力強い紗綾の言葉に、私は顔を上げて、小さく微笑んだ。 彼女の強さに、目を細める。 叶わないと知りながら、愛し続ける。それは、口に出来るほど簡単なことじゃない。 「分かってるよ」 私はそう言い鞄を片手で持つ。 「後悔なんてしてないわ」 そう言って手を振り、私は教室を後にした。 後悔なんて、していない。 この一年間、色んなことがあった。 だけど一度だって、 ほんの一瞬だって、後悔したことはなかった。  
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加