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「ねえ、紗綾」
「ん?」
紗綾の後ろの窓から差す光のせいなのか、紗綾が輝いて見える。
迷いもなく、真っ直ぐに吸血鬼を愛すると決めた紗綾。
共に歩むことを願い、信じた紗綾。
「この恋は…間違いだったと思う?」
私の前に唐突に現れた吸血鬼。
彼は、貧しい一国を背負う王子で、
それを改善する為に、こっちの世界にやって来た。
だから、リルが手に入らなくても
どの道、会長は向こうの世界に帰ってしまう。
そのことを、私は知っていた。
…最初から。
「間違いなんて、思わない」
力強い紗綾の言葉に、私は顔を上げて、小さく微笑んだ。
彼女の強さに、目を細める。
叶わないと知りながら、愛し続ける。それは、口に出来るほど簡単なことじゃない。
「分かってるよ」
私はそう言い鞄を片手で持つ。
「後悔なんてしてないわ」
そう言って手を振り、私は教室を後にした。
後悔なんて、していない。
この一年間、色んなことがあった。
だけど一度だって、
ほんの一瞬だって、後悔したことはなかった。
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