†恋の魔法は零時まで†

5/7
前へ
/30ページ
次へ
ただ、思うことはあった。 生徒会室の入口の前で立ち止まり、 私はフと、その側の男女のグループを見た。 楽しそうに笑いながら喋っている。 会長に出会うまで、私もそんなグループの一員だった。 普通の人間に恋をして、 デートがどうだの、キスがどうだのと はしゃいでいた。 もし会長に恋をしなければ 私はこんなに叶わない恋に 苦しむことはなかったのに。 大好きな人は生きているのに、 逢えない。 もう二度と、逢えなくなる。 会長が、これからどんな道を生きてゆくのかも、知ることはない。 大好きなのに、世界という壁が 邪魔をするんだ。 俯き、片手で顔を覆う。 考えれば考えるほど、闇に飲まれていく。 そんな自分が、酷く情けない。 「何やってんのや?」 様々な考えを巡らせていると 扉がガラリと開いて、会長が現れた。 「ずっと立っとるつもりか?」 「ちょっと…考え事してた」 私はそう言って笑い、会長の横をすり抜けて、生徒会室に入る。 カーテンが窓中にかけられ、薄暗い。 光を嫌う吸血鬼。 闇に紛れれば私も…。 私は自分の馬鹿馬鹿しい考えに 呆れたような笑いをしてから 首を振り、近くのソファーに座った。  
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加