†恋の魔法は零時まで†

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「他の役員は?」 「ああ、今日は生徒会ないんや」 「へー…」 そこで会話は途切れ、 いつもとは違う、ぎこちない沈黙が部屋に降りてきた。 嫌な予感からか、私の心臓が ドクンと揺れているのが分かる。 駄目だ、何か…喋らなきゃ。 そう思うのに言葉は出てこない。 そうこうしている間に、 正面のソファーに会長がドシリと座った。 「話が、あってな、湖琴」 名前を呼ばれてピクリと反応する体。 駄目、駄目だよ…言わないで。 「俺は、国に帰らんと」 こんな時、私は何と言うべきなんだろう。 『行かないで』 紗綾ならきっと、そう言うだろう。 だけど…そんなの。 「ニャ-…」 私の膝の上に、何かが軽やかに乗ってきて、私はハタと意識を遮断する。 「…猫?」 白い毛並みに、黒色の目をした 猫が、私の膝の上で丸くなる。 「なんや、気に入られたな」 そう言って会長は笑う。 「また、拾ってきたの?!」 会長はよく捨て猫を拾う。 猫はまだしも、大型犬を拾ってきたときはビックリした。 そして必ず飼い主を探すのだ。 「放っておけんやろ」 道端で死にかけている猫を、 彼は国の民と被せているのだ。 猫は生まれてきただけで何の罪もないのに 風に吹かれ雨に濡れ、死んでゆく。 誰に手を差しのべられることもなく。 それはあまりに残酷だと、 いつもいつも会長は言っていた。 「可愛いですね」 「湖琴チャンに似とるよ」 「な、何処がですか!!」 私の問いには答えずクスクス笑う会長。 見放された者を放っておけない。 彼は、一国の王子。 手を、差しのべる者。 私には会長を引き留めることは 出来ない。 こんなに優しい人を、 困らせたくはないのだ。 「か……秦」 「ん?」 「好き」 「…知ってるよ」 何や、急に。と会長は笑う。 私は切なげに、猫に向かって笑いかけてから、会長と向き合った。  
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