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外には雨が降っていたけれど
特に何もない、日常。
いつものように一緒に帰ろうと
会長を探していた。
ピロティやら、食堂やら
走り回って探したが、そこに居た生徒に、
教室で見た、職員室に行った、
などと言われるだけで、
一向にその姿は見えなかった。
諦めて、最初に来た生徒会室を開けると、
会長が、雨に濡れて半裸状態で立っていた。
勿論、何故濡れて、半裸で居るのかと言う疑問があったけれど、
それはすぐに、会長が抱いている猫を見て、大体の理解は出来た。
そんなことより、私の頭にあったのは、会長が、こんな所に居た事だ。
脱力してため息をつくと
「どないしたんや」
と会長が笑う。
「ずっと探してたんですよ!」
あっちこっち!!
と、私は少し膨れ顔をして見せた。
すると会長は、軽快に笑ってから、かんにんな。と言って私をソファーに座らせる。
他の役員達は気にすることなく
作業を続けていた。
「猫はな、縄張り意識が強いんや」
「え、あ、はい」
「ここは、俺の縄張りやから」
何が言いたいのか検討がつかずに居ると
「せやから、俺を探すよりここで待ってた方がええよ」
「そう…ですね」
散々走り回った後に言われても
もう今更嫌味にしか聞こえない。
「俺はここに戻って来るんやから」
だけど何故かその言葉は、
少しの切なさを伴い、私に響いた。
「……本当に?」
「ああ、勿論」
あの時感じた気持ちが何だったのか。
今でもまで分からない。
「湖琴チャン」
呼び掛けられて辺りを見回すと
軽く手を振っている会長が見えた。
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