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犬はキバを俺の手の平に突き刺したまま、不思議な目でじっと俺の目を見つめて何かを探るような眼差しを向けてくる。
「大丈夫、傷の具合を見るだけだから………。」
俺は噛まれていない右手で、犬の背中を優しく撫でてやりながら、犬の緊張をほぐすようにそっと言った。
すると、俺の手に噛み付いていた犬から力が抜け、ぐったりと動かなくなった。
「犬!?」
呼んでも、覗き込んでも反応がない!
口元に手を翳すと、僅かだが呼吸はしているようだ。
死んでない!
俺は力の抜けた犬の体を抱え走り出した。
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