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カリヤは町外れの塔の前に立っていた。
母親が飛び降りた………。
カリヤの母はとても優しい人だった。
早くに父を亡くし、貧しかったが、仲の良い母子はお互いを大切に思い、幸福に暮らしていた。
母、マリアが飛び降りたあの日はカリヤの誕生日で、一緒に隣町へ行く約束をしていたのだ。
そんな母が自分との約束を反古にし、何より自分を残して自殺なんかする訳がない!!
カリヤはそう確信し、事件の真相を調べる為に、唯一の手掛かりである、この塔へやって来たのだった。
今まで起きた4件の飛び降り自殺。それは全て、この塔で起きていた。
「絶対、ここに手掛かりがあるはず…」
カリヤは確信していた。この事件には第三者が関与していると…。
母親から厳しく、近付く事を禁じられていた場所。母親が生きていた時は約束を違えた事など一度も無かった。
だが今は……。
「ゴメン、母さん……」
そう呟き、カリヤは塔内に足を踏み入れたのだった…。
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